このシリーズの前回記事も8月ということで、実に3か月以上ぶりになってしまいました。
まあ、その間にTKK5200や3452Fなどさまざまな3Dプリント製品が発売されていたので仕方がないのですが、12月の目玉商品としてそろそろ手を付けないわけにはいきません。
今回は前回記事の続きから、大まかな設計完了・プリント手前までのご紹介となります。
前回までの状況。
今回はその続きです。
・台車編
次に設計に取り掛かったのが台車でした。
先頭T車はFS-075、中間M車はFS-375です。
小田急5000形は、2400形から採用されたM車とT車の車輪径が異なるMT異径の設計を踏襲しています。
M車には粘着性確保のため車輪径を910mmと大きくとり、逆にT車は車重軽減のため車輪径を762mmと小さくしていました。
国鉄103系でも似たようなことをしていましたね。
1/150で換算すると、それぞれ
910mm/150=6.066......≒Φ6.1
762mm/150=5.08≒Φ5.1
となります。
現在市販されているNゲージ車輪は、その大半が実車860mm径をモデルとしたΦ5.6です。
国鉄103系の場合、T車は860mm、M車は910mmで、1/150にすれば0.4mm程度の差ですので無視してもよいレベルでした。
しかし、今回の小田急5000形はT車が762mmと結構な小径車輪を採用しており、1/150でも1mm程度差が生じてしまいます。
というわけで市販品の車輪径をさらに調べてみました。
すると、
KATOBトレイン用小型車両台車:Φ5.2
というものがあるらしい……
これならΦ5.1にかなり近いですね!
問題は動力台車で、Φ6.0の車輪自体は鉄コレから出ていますが、Φ6.0で軸距14.6mm、台車間距離91mmという動力ユニットは無さそうです。
そもそも、GMや鉄コレ動力の大半が、2200mm軸距の台車は14.0mm(実車2100mm)で統一されているので、どうしてもエラーになってしまうのですが……
ついに動力ユニットまで設計することになるのでしょうか……?
CAD上に描いていきましょう。
最初に、車体に対して台車及び車輪の中心線を罫書ます。
ボルスタ及び車輪は以前製作したデータを挿入しています。
罫書いた中心線を基準にしてディテールをスケッチしつつ、適宜ソリッドにしていきます。
著作権の関係上資料写真を載せていませんが、画像検索や雑誌等で掲載されている写真・図面を参考にし、キャンバス投影しています。
今回台車用に描いたスケッチです。
台車のうち左半分だけ描いて、大体のディテールが仕上がったらミラーさせています。
ボルスタやボルスタアンカ・ボルスタアンカ受、軸ばねなどは左右対称にならないので、別に作ります。
ソリッドにした際も、そこだけは台車枠と結合させず分離しておかないと、左右反転してしまいます。
出来上がりがこちらです。
以前東急8500系で作成したTS-807と同じダイレクトマウント式の台車ですが、ボルスタやボルスタアンカ受の形状に小田急らしさがありますね。
個人的にはボルスタアンカ受けの車体結合部が内側に折り込まれる形状に"らしさ"を感じます。
また、ブレーキ装置は両抱き式のために全体的に大ぶりです。
前身の2600形では、ボルスタ周りは同じでも片押し式だったためにもう少し簡素な造りでした。
この形状こそ小田急の台車といった形でしたが、結局2000形でモノリンク式を採用し、さらに3000形以降は軸梁式に移行してしまいました。
M台車のFS-375は075のデータを基に軸距を14.6mm、車輪径をΦ6.0として作っています。
車輪径が大きくなり、軸距が100mm伸びています。
そのため、軸ばねの長さやボルスタ左側の空間の大きさに違いが見て取れます。
わかりますでしょうか?
・車体編
前回記事では先頭車しか作っていないため、中間車が必要です。
前回記事では先頭車しか作っていないため、中間車が必要です。
番台的には、クハ5050/5150、モハ5000/5100と4番台ありますが、基本的には機器装置類の違いで分けられており、ボディ自体は先頭T車と中間M車の2形式のみとなります。
それでは中間車の設計を、といきたいのですが、その前にボディの仕様を模型用に整えます。
車体のディテールは前回までの記事で出来ていますが、模型として強度や組立方法を確立させるために、ボディの厚みやパーツの別パーツ化などを今のうちに作り込んでおきます。
まずボディの厚みですが、Nゲージ用はどの形式も0.7~0.8mmを基本に設計しております。
本当はもっと薄くしたいのですが、強度や経年劣化・変化を考えるとこれが限度といえそうです。
しかし、窓周りまでこの厚みだとボディの縁が窓から目立って見栄えが良くありません。
そこで、窓周りだけ裏側を窪ませて0.2~0.4mm程度にします。
普段はこのような面取りはしないのですが、ある試みのために行っています。
先頭車も同様に窓周りの裏を窪ませます。
さて、ある試みのために窓縁を面取りしたのですが、その試みとはこちら。
この形式に限らず窓の固定方法にはHゴムやアルミサッシがよく使われますが、鋼製車の場合このサッシを銀に塗り分ける必要が出てきます。
ステンレス車やアルミ車ならボディの銀塗装で十分ですが、鋼製車はそうはいきません。
5000形の場合、ドア窓・戸袋窓のHゴム+客窓のアルミサッシの全てを塗り分ける必要があり、恐らく大変面倒臭い作業になることが予想されました。
そこで、いっそ別パーツ化してしまおう!というわけです。
このパーツをよく見ると、Hゴムやサッシ部が凸形状になっています。
面取りしてテーパーを付けることで、パーツを嵌まりやすくする効果を狙っています。
裏から見た感じ
こちらは純粋に厚みを軽減するための措置です。
はめ込みガラスではなく板状ガラスを採用する以上、車体の厚み=ガラスの奥まりとなるため、その分窓開口部の縁に車体の厚みが見えてしまいます。
だからこそ出来るだけ窓周りを薄く見せたいのです。
組み合わせた結果です。
こう見る限りでは、ボディやサッシ別パーツの厚みは気にならないように見えます。
問題は実際に出力してみてどうみえるか、ということですね。
次に、スナップフィット用ピン/ピン穴の設計です。
スナップフィットとは、凸型のピンを凹型又はピン穴で開口した部分に差し込み、相互の摩擦力で結合する組み立て方式のことです。
接着剤不要でワンタッチで組めるため、初心者でも簡単に組み立てられるのが特徴ですが、ピンとピン穴の精度が要求されるため、設計は難しくなります。
nano facotryでは、TKK8000系で試作したものが良好な結果だったため、11月発売予定のTKK8000 2次車更新車より採用予定です。
今回はそれを基本として、少し改良して採用してみました。
TKK8000のスナップフィットピン/ピン穴
これにより組立の容易化と反りの矯正を同時に達成する画期的構造としたのですが、組立順序的には屋根板と側板を必ず先に結合する必要がありました。
つまり、大抵の場合グレー塗る必要のある屋根板を最後に組むことができないため、現状では屋根板のためにマスキングする工程が絶対に必要になるのです。
ボディだけ先に組み立てて、後から屋根板だけ接合できるようにすればマスキングの必要がなくなりますよね。
というわけでこうしました。
ボディ側にピン穴、屋根板にピンを設けることで、先にボディ単体で組んでから最後に屋根板をかぶせる構造としたわけです。
これなら、屋根板だけグレーに塗った後、ボディにはめ込むだけですのでマスキングいらず!
ただしこの構造だと、もし屋根板に大きな反りが発生した場合、ピンとピン穴の摩擦力のみで拘束することになるので、うまく反りを矯正できない可能性があります。
こればかりは試作してみないとわかりませんね……
さて、側板と妻板の接合もあるのですが、ここは実をいうとどんな設計にするか迷っていて後回しとなっています……
そして完成形。
前回終了時点
の画像と比べると、ボディの厚みが目立たなくなっているのがわかりますね。
これはこれでカッコいい!
この頃はジャンパ線が前面についていましたね。
さて、先頭車が出来たので中間車の設計に移ります。
ボディ自体は、先頭車乗務員室部分をカット、妻側をミラーさせてガッチャンコすれば出来てしまいます。
ボディの分割・除去・ミラー・移動・結合で終了です。
問題は屋根板です。
というよりパンタ台周辺の配管類です。
なんてったってまず資料がありません。
5000形は保存車輛がないうえ、近似の2600形ですら先頭車しか保存されていません。
そのため、画像検索や雑誌の特集号を集めるほかありませんでした。
幸いプロトタイプの1・2次車の資料は集まりましたが、これがどうやら製造年次で配管の取り回しが違うらしい……
5200形の設計には困りましたね……
とりあえず資料に沿って配管経路をスケッチします。
そのコピー屋根板を配管経路のスケッチに沿ってボディ分割します。
言っている意味がわかりますでしょうか?
こうすることで、丸みのある屋根板に沿った配管が作成可能です。
他に効率的な作成方法があったら教えてください……
避雷器は六角形のものが付いています。
どうやら側面と上面に細かい円形の穴が開いていたようなので、そのあたりもしっかりディテールを起こしておきます。
ヒューズ箱も作成。
完成形がこちらです。
どうでしょう?
配管類が少しごつく見えますが、以前これより細く作って出力してみたら非常にあっさりとした表現になってしまったため、この程度でちょうどいいかと思われます。
3D画像で見た時と実際に出力してみたときの印象は結構異なり、より大味に見える場合もあれば逆にあっさりしすぎに見える場合もあるので、一概にどう作ればいいというものでもないのです。
ただ、これまでの経験上、0.5mm以下のディテールは、凸形状や開口穴の場合すこし大きめに、凹形状の場合は控えめに設計するとよいように思えます。
さて、本日はここまで。
次回は試作品のお目見えとなりそうです。
サッシ別パーツやスナップフィットの具合、台車のディテールなど、気になる要素が多すぎて胃が痛い楽しみですね💦
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